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AI時代、技術提案が軽くなりすぎる

#AI #エンジニアリング #意思決定

こないだ、若めのエンジニアから、プロダクトを一気に刷新するような提案を受けた。

既存の構造を大きく変えて、新しく作り直した方が早い、という話だった。
それ自体が悪いとは思わない。むしろ、そういう提案が出てくること自体は健全だと思う。既存のものを疑うことも、新しい構造を考えることも、エンジニアリングには必要だ。

ただ、その提案を聞きながら、自分はけっこう細かく質問した。

これはなぜ変えるのか。
ここは何がボトルネックなのか。
一気に変えることで、どこがどれくらい良くなるのか。
段階的に変える案はないのか。
失敗したときに戻せるのか。
今のチームの人数や運用能力で、本当に持てる構造なのか。

そういう要素をひとつずつ分解して聞いていったけど、あまり明確な答えは返ってこなかった。
最終的には「新しく作った方が早いから」という話に近かった。

ここに、今のAI開発の良いところと悪いところが両方出ている気がした。

AIがあることで、以前よりもずっと簡単に大きな構想を作れるようになった。
設計図も書ける。比較表も作れる。移行案も出せる。もっともらしい技術選定もできる。
「Cloud Runで動いているアプリを、マイクロサービス化して、Kubernetesで運用しましょう」みたいな提案も、今ならそれっぽい文章で簡単に出せる。

でも、それが本当に必要かどうかは別の話だ。

たとえば、既存のWebアプリケーションをRustにしましょう、という提案があったとして、Rustが悪いわけではない。
Kubernetesもマイクロサービスも、別に悪者ではない。
ただ、小さい組織で、それをやる意味が本当にあるのか。
その複雑さを誰が持つのか。
移行中に止まる開発速度をどう考えるのか。
運用で詰まったときに、誰が最後まで面倒を見るのか。

そこまで含めて提案しないと、ただの「経験したい技術の持ち込み」になってしまう。

もちろん、自分も若い頃は似たようなことを考えていたと思う。
新しい技術を使いたい気持ちはわかるし、今の構造が古く見える瞬間もある。
ただ、プロダクトの刷新は、コードを書き直すことではなく、事業やチームの動き方まで変えてしまうことがある。

だから本来は、「全部変えましょう」ではなく、
「まずここだけ変えると、この数字が改善するはずです」
「この部分だけ切り出せば、失敗しても戻せます」
「この移行なら、今のチームでも運用できます」
みたいな話であるべきだと思う。

AIによって、提案の見た目はどんどん立派になる。
でも、見た目が立派な提案ほど、分解して聞いていく必要がある。

なぜそれをやるのか。
やらなかったら何が困るのか。
どの順番で変えるのか。
どこまでやったら成功なのか。
誰が運用するのか。

こういう問いに答えられない大刷新は、たぶん技術提案ではなく、技術願望に近い。

そして、これからシニアエンジニアは、そういう“それっぽい提案”に対して、毎回かなり丁寧に反論しないといけなくなるのかもしれない。
それはけっこう疲れる。

でも同時に、ここを雑に流すと、プロダクトは簡単に複雑な方向へ進んでしまう。
AIで提案が軽くなった時代だからこそ、意思決定はむしろ重く扱わないといけない。

最近、そんなことを思った。